音階の話(その3)
今回はメジャーコードとマイナーコードは裏表という話をします。
メジャーコードとマイナーコードを聴き比べてみるとメジャーコードは明るく前向きな響きを感じるのに比べ、マイナーコードは暗く悲しい響きを感じるのはなぜでしょうか。
メジャーコードとマイナーコードの第2音、メジャーコードなら主音のドから数えてド、レ、ミの3番目、マイナーコードなら主音のラから数えてラ、シ、ドの3番目で3度の音という言い方をしますが、ドミソならミの音、ラドミならドの音の主音からの距離が半音違うだけです。この3度の音が半音違うだけでどうしてこんなに印象が違うのか、僕はとても不思議でした。でも、ある時、この違いは単に半音の違いではなく、もっと根本的な違いがあることに気づきました。
前回、音階が螺旋階段のような構造をしていて、この螺旋階段を上から眺めたものを時計の文字盤に例えてお話ししましたが、その文字盤をもう一度思い出してください。
メジャーコードの場合は1度と3度の間は半音が4つ入ります。そして3度と5度の間は半音3つです。逆にマイナーコードの場合は、1度と3度の間は半音が3つ、3度と5度の間は半音4つです。これは、実はメジャーコードとマイナーコードは鏡に映した映像のように逆さまの構造をしているということなんです。
しかし、その構造がどうして印象の違いに結びつくのか、これはしばらくの間謎でしたが、そのヒントを見つけました。
ドミソの和音がなぜ調和するのかという話はもうしたかと思いますが、もう一度おさらいしてみたいと思います。倍音の話です。ドミソの主音、ドの音の周波数を仮に1とすると三度上のミは5倍音の2オクターヴ下、つまり 5/4倍音、ソの音は3倍音の1オクターヴ下、つまり 3/2倍音です。これは主音のドを基準に高い方へ、つまり時計回りに倍音比をたどった場合です。しかし逆の場合はどうでしょう。つまり基準音から低い方へ倍音をたどるとどうなるでしょうか。
つまり、基準音から時計の針を反時計回りにたどるとどうなるかということです。
今度はソの音からやってみます。そうすると 1/2 倍音は1オクターヴ下のソ。1/3 倍音はさらに下のド(オクターヴ上げて 2/3倍音)1/4 倍音は基準音から2オクターヴ下のソ、1/5 倍音はさらに下のミ♭(D#) (2オクターヴ上げて 4/5倍音)になります。
ややこしいけれどちょっと我慢して考えてみてください。
ソ、ド、ミ♭(D#) は、C マイナー、マイナーコードになります。
つまり、ドミソの和音を聞くとき、意識は音の高い方へ向かって和音を認識するのですが、ラドミ、つまりマイナーコードを聞くとき、意識は音の低い方へ向かって和音を認識するのです。これがメジャーコードとマイナーコードを聴いた時の印象の違いを説明するヒントではないかと思うのです。